筆者紹介

いのともみ
元警察官ライター
2023年まで都内警察署で勤務。在職中は交通部門で働いた経験が10年近くあり、退職後はWebライターとして飲酒運転防止、安全運転教育などの執筆をおこなっている。
令和7年3月24日から、運転免許証とマイナンバーカードが一体化した「マイナ免許証」の新制度がはじまります。
この制度はマイナカードのICチップに免許情報を書き込むことで、マイナカードを免許証(マイナ免許証)として利用ができるようになるというもの。
- 従来の免許証で保有する
- マイナ免許証で保有する
- 両方を保有する2枚持ちスタイル
これにより、免許保有者は自分の免許証の持ち方を選択できます。
マイナ免許証には様々なメリットがある一方で、もちろんデメリットも。
今回のコラムでは、新制度「マイナ免許証」のメリット・デメリットをご紹介します。
新制度「マイナ免許証」についての理解を深めましょう!
なお、本コラムは以下ホームページを参考に作成しています。
「令和4年改正道路交通法(マイナンバーカードと運転免許証の一体化)」(警視庁)
マイナ免許証制度 よくある質問 (栃木県警察)
免許証保有スタイルは3パターンに

冒頭でも述べたとおり、今後の免許証保有スタイルは以下の3パターン。
- 従来の運転免許証のみ1枚
- マイナ免許証のみ1枚
- 従来の免許証とマイナ免許証の2枚
保有形態の変更手続きは免許更新時期に関わらず、いつでも申請・手続きすることができます。
ただし多くの都道府県で、警察署での保有形態変更手続きは不可のようです。
多くは免許センターのみでの手続きとなるようなので、お住まいの都道府県警察ホームページなどで確認してみて下さい。
そして、免許更新や記載事項変更手続きとあわせて保有形態を変更することも可能です。
今後は免許更新の際に、どのスタイルで保有するか選ぶことになるようですね。
では、さっそくマイナ免許証のメリットから解説してみましょう!
マイナ免許証のメリットは?
メリット①マイナンバーカードが免許証になる
マイナンバーカードに免許情報が記録されるため、免許証が不要になるマイナ免許証。
免許証を持たずともマイナンバーカード1枚あれば、免許証不携帯にはなりません。
手持ちのカードを一枚でも減らしたい方にはうってつけ。
ただし従来免許証券面に記載されていた免許情報はマイナンバーカードのICチップに記録されるため、マイナンバーカードの券面からは確認できません。
そのため、免許情報の確認には専用のアプリを利用する必用があります。
「マイナ免許証読み取りアプリ」公開 運転免許情報をスマホ・PCで確認
マイナ免許証では、マイナンバーカードICチップ内に以下の免許情報が記録されます。
・マイナ免許証の番号
・免許の年月日およびマイナ免許証の有効期間の末日
・免許の種類
・免許の条件に係る事項
・顔写真
・色区分
など
マイナンバーカード券面に記載のある住所・氏名・生年月日は記録されません。
なお、マイナ免許読み取りアプリで読み取った免許情報画面を提示しても、免許証を提示したことにはならないので注意して下さい。
メリット② 住所変更等の手続きがラクになる
マイナ免許証メリットの2つめは、住所変更の手続きがラクになること。
このメリットは「マイナ免許証のみ1枚持ち」の人が享受できるメリットです。
従来の免許証と2枚持ちの場合は、従来の通り警察署での住所変更手続きが必要になるので注意しましょう。
では、どのように住所変更の手続きがラクになるでしょうか。
まず、メリットを享受するため、事前に警察施設の機器で署名電子証明書の提出(発行手続)とマイナポータル連携を行います。
その事前手続きを完了した後は、住所変更の際はワンストップで手続きができるように。
市役所や町役場でマイナカードの住所変更の届出をすると、免許証の記載事項は自動で更新されるので、わざわざ警察署に免許証の住所変更をしに行く必要がなくなるのです。
これは利便性の面からみても大きなメリットと言えますね。
署名電子証明書とは簡単にいえばパスワードのことで、紙に書くサインの代わりになる暗唱番号。
警察施設に設置の機器にパスワードを入力するようですが、忘れてしまった場合は警察署では調べることはできず出直しになるようなので要注意。
事前に市や町の窓口で調べてから行くようにしましょう。
メリット③ 更新時講習をオンラインで受講できる
優良・一般の区分に限定されるメリットですが、更新時講習をオンラインで受講でき、講習手数料も300円から600円ほど安くなります。
特に子連れで更新時講習を受講しなければならなかったママさんには嬉しいメリットではないでしょうか。
更新時講習をオンラインで受講する際の注意点は3つ。
・講習がオンラインになっても手続き視力検査などがあるため、免許センター・警察署へ行く必要があります。オンラインで全て完了するわけではないので、勘違いに要注意。
・更新手続きに行く前に、オンライン講習の受講を完了しておく必要があります。
・オンライン講習を受講すると、受講中に顔写真を撮影され、きちんと本人が受講しているか確認されます。替え玉受講や居眠りなどをすると、手続きの際に再度受講することになるようなので気を付けましょう。
時間を有効に使えるメリットといえるでしょう。上手に活用したいところですね。
メリット④ 住所地以外での更新手続きが迅速に
「経由地更新」と呼ばれる、住所地以外の免許センターで更新をする場合の手続きがより迅速になるメリットです。
経由地更新手続きそのものがいろいろと注意点のある手続き方法になりますので細かいところは割愛しますが、これまで新免許証は手続き後に郵送されていたところ、マイナ免許証なら即日での交付が可能になります。
特に地方は車がないと生活に困ることも多いので、迅速な手続きができるとありがたいですね。
経由地更新についての詳細は、手続きを行いたい場所の警察署や免許センターに問い合わせてみて下さい。
メリット⑤ 更新手数料がお安くなる
免許証の保有形態によって手数料は異なり、以下のとおりです。

マイナ免許証のみ保有の場合、更新手数料が従来と比べてもお安くなります。
一方で2枚持ちを選択すると従来よりも高くなってしまうようです。
物価高に悩まされる昨今、手数料が安くなるのはありがたいですね。
マイナ免許証には注意点も!デメリットを確認しよう
ここまではマイナ免許証のメリット5点解説してきましたが、もちろんデメリットもあります。
注意点をよく確認しておかないと、知らぬ間に免許証不携帯になったり失効して運転できない事態に陥る可能性も。
デメリットについてもよく理解した上で、マイナ免許証を活用したいですね。
ここからは、マイナ免許証の注意点やデメリットについて説明していきますよ!
デメリット① 免許証の有効期限がわかりづらい
従来の運転免許証では券面の目立つ場所に有効期限が記載されていましたが、マイナ免許証では免許証の有効期限はICチップに記録されるため、見ただけで確認することはできません。
これまで通りハガキで更新のお知らせは届きますが、引っ越ししたばかりの場合や住所変更手続きができていない場合は、お知らせが届かない可能性もあります。
またマイナ免許証と従来の免許証2枚持ちの方は、従来の運転免許証の住所地に更新お知らせハガキが郵送されるそうです。
マイナ免許証だからと警察署で行う運転免許証の住所変更手続きをしていない場合、2枚持ちの方は更新ハガキが届かないリスクがあるということ。
お知らせが届かなくても有効期限内に更新しなくては、失効してしまう運転免許証。
ぱっと見て確認ができないのは不安が残るところですね。
マイナポータルとマイナ免許証を連携すると携帯で更新のお知らせ通知を受け取ることができるそうなので、忘れずに連携しておきましょう。
デメリット② 再交付手続きに時間がかかる
筆者が個人的に「マイナ免許証のみ保有する場合の最大のデメリット」と感じる点です。
これまで免許証を紛失・破損した場合は、免許センターで即日免許証の再交付を受けることが可能でした。
しかしマイナ免許証のみ保有の方がマイナ免許証(マイナンバーカード)を紛失した場合、まずは市町の窓口でマイナンバーカードの再交付手続きをしなければなりません。
マイナンバーカードの再交付には早くとも1週間程度かかります。
その後再交付したマイナンバーカードを持って免許センターに行き、マイナ一体化の手続きしなければ免許証の再交付をしたことにならないのです。
従来よりもずっと時間と手間を要する再交付手続きになることがわかりますね。
日常的に運転をする人にとっては、マイナ免許証を紛失すると再交付手続きを完了するまでの一定期間、運転が出来なくなるリスクがあるといえるでしょう。
ただし、運転免許証とマイナ免許証の2枚持ちの場合は、マイナンバーカードを紛失しても従来の運転免許証があれば運転することが可能です。
デメリット③ マイナンバーカード本体に不具合があると影響を受けやすい
マイナンバーカードの有効期限は10年(未成年の場合は5年)で、免許証の有効期限(3年~5年)とは異なります。
そのため免許証の有効期限がわかりづらく、うっかり失効してしまう危険性があることはデメリット①で述べたとおりです。
そして有効期限が異なるデメリットをもう一つ。
マイナンバーカードの有効期限が切れていても免許証の有効期限内であればマイナ免許証は有効なので運転は可能ですが、有効期限の切れたマイナンバーカードではマイナ免許証の更新手続きをすることは出来ません。
マイナ免許証を有効な状態にしてから、マイナ免許証の更新手続きをする必要があります。
さらにマイナンバーカードと一体化することで起こるデメリットが一つ。
マイナンバーカードのICチップが破損してしまい免許情報が確認できなくなると、それは免許証ではなくなってしまいます。
無免許になることはなくとも免許証不携帯とみなされるおそれがある、とのことなので早急に手続きをする必要があります。
(ちなみに従来の免許証のICチップが破損しても、免許証不携帯になることはありません。)
マイナンバーカードと一体化しているマイナ免許証は、マイナンバーカード本体に不具合があると影響を受けやすいことがわかりますね。
メリットとデメリットを理解して活用しよう!マイナ免許証
このコラムでは、マイナ運転免許証のメリットとデメリットについて解説してきました。
最後にまとめをご覧ください。


- マイナンバーカードが免許証になる
- 住所変更等の手続きがラクになる
- 更新時講習をオンラインで受講できる
- 住所地以外での更新手続きが迅速に
- 更新手数料がお安くなる
- 免許証の有効期限がわかりづらい
- 再交付手続きに時間がかかる
- マイナンバーカード本体に不具合があると影響を受けやすい
いかがでしょうか。
ここまでの解説で、「従来の運転免許証とマイナ免許証の2枚持ちにすればよいのでは?」と考える方も多いかと思いますが、2枚持ちの場合は住所変更時に警察署へ行く必要がありワンストップのメリットを受けられませんし、各種手数料が少し高くなってしまいます。
何事も良い点と悪い点があるということ。
利便性の向上が図られた今回の「マイナ免許証」についても、同じことがいえるでしょう。
制度をよく理解した上で、納得して選ぶことが大切。
新制度「マイナ運転免許証」の今後について、注目して見ていきたいですね。