【元警察官】が解説!知らないと大変!「飲酒運転周辺者三罪」

飲酒運転は犯罪。道路交通法で飲酒運転が厳しく罰せられることは周知の事実です。
では飲酒した本人でなくても飲酒運転に関係した周囲の人が罰せられる、飲酒運転周辺者三罪についてはご存じでしょうか?
今回は知らないではすまされない飲酒運転周辺者三罪を元警察官である筆者が解説します。

飲酒運転周辺者三罪とは?その内容を解説

飲酒運転周辺者三罪とは「1車両提供罪 2酒類提供罪 3飲酒運転同乗罪」の三つの罪を指した言葉です。この三罪を理解するために、まずは飲酒運転に関する道路交通法をご紹介します。

道路交通法 酒気帯び運転等の禁止
第65条 第1項
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
第65条 第2項
何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
第65条 第3項
何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
第65条 第4項
何人も、車両(中略)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運送して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第1項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
出典:警視庁

第65条2項から4項を確認してください。
飲酒運転した本人でなくても、飲酒運転は周囲にも責任が追及されるということですね。
以下でもう少し細かく説明します。

【車両提供罪】

車両提供罪は、運転者が「飲酒していることを知っている」または「飲酒する可能性があることを知っている」にも関わらず、車を貸し出す行為や車のカギを渡す行為をさします。
ポイントは「可能性があることを知っている」と罪が成立すること。
確実ではなくてももしかしたら…と感じた場合、車両を提供してはいけません。

【酒類提供罪】

酒類提供罪とは「飲酒運転をするおそれがある者に対して、酒類を提供または飲酒をすすめる行為」が該当します。
車両提供罪と同じく「おそれがある」という条文内容からわかるように、飲酒運転の可能性を感じた場合は酒類を提供してはいけません。
また、運転手が運転することを伝えているにも関わらず「一杯だけ」「近所だし」「捕まらなければ大丈夫」などと言ってお酒をすすめることは、酒類提供罪の飲酒をすすめる行為にあたります。(逆に「運転することを完全に知らなかった状態で単にお酌をする」などの行為は該当しません。)
飲食店で働く方はこの種類提供罪にならないように、後述の飲食店対応策を是非実践してみて下さいね。

【飲酒運転同乗罪】

飲酒運転同乗罪は車両提供罪・酒類提供罪と違い、成立に2つの要件があります。
1つ目は、「運転手が酒気をおびていることを知っていた(酒を飲んでいることを知っていた)」こと。
では「運転者が酒気をおびていることを知っていた」とは、具体的にどういう状況でしょう。
事例としては、

  • お酒を飲んでいるところを見た
  • 直接お酒を飲むところを見てはいないが、酒の席に同席していた
  • 運転手からアルコールのにおいがすることに気が付いていたり、酔っている様子(呂律がまわらない、ふらふらしている等)に気が付いていた

などがあげられます。

要件の2つ目は、「自己を運送することを依頼、または要求して同乗した」こと。
つまり寝ている時にいつの間にか乗せられていたというような、同乗者の意思に反する状況は飲酒運転同乗罪にはあたりません。
その時の会話の内容で、依頼・要求したことになるか決まります。

参照した法律事務所サイトによると、飲酒運転同乗罪に問われると、車内という狭い空間のなかで「運転手の飲酒に気が付かなかった」と罪の適用を否定することは、とても困難なことと言われているようです。
確かに酒の匂いというのはなかなかごまかせないもの。
狭い空間で気が付きませんでしたというのは苦しい言い訳に聞こえます。

飲酒運転周辺者三罪の処罰規定

では周囲の責任についての処罰はどのくらい重いのでしょうか。
警視庁がわかりやすい一覧を発表していますのでご覧ください。

運転者以外の周囲の責任についての処罰


出典:警視庁

上記の一覧を見ると、周辺者であってもしっかり処罰を受けることがわかります。
またこのほかに運転免許取り消し等の行政処分も課せられます。
お酒を提供する飲食店の人や一緒に酒席に参加する人は、自分の身を守るためにも飲酒運転撲滅の意識を忘れてはいけませんね。

飲酒運転した本人でなくても免許取り消し!飲酒運転周辺者三罪の事例紹介

警視庁が発表している、実際に飲酒運転周辺者の罪で運転免許が取り消しになった事例を見てみましょう。

事例1【同乗】
知人が酒を飲んでいることを知りながら、車の助手席に乗り込み、二次会の場所まで送るように依頼し、同乗した者が、同乗罪で2年間の運転免許取消(東京都葛飾区)

事例2【酒類提供】

飲食店を経営する店主が、客が車で来店しているのを知りながら、店内において日本酒、ビール等を提供し、酒類提供罪として2年間の運転免許取消し(東京都調布市)
出典:警視庁

飲酒運転した本人ではなくても、同乗した人や酒を提供した人が罰せられています。

厳しい捜査からは逃げられない!元警察官が教える飲酒運転周辺者の捜査

筆者は警察官時代に飲酒運転被疑者検挙の捜査を経験したことがあります。
そこで体感したのがその捜査の細かさ。
どこで飲んだのか、だれと飲んだのか、どれだけ飲んだのか、酒をどこから手に入れたのか・・・
事細かく取り調べと捜査が行われます。

たとえ被疑者が周辺者を守ろうと取り調べで黙秘したとしても、防犯カメラや目撃者捜査などを細かく行い、事件の詳細を明らかにします。
いたるところに防犯カメラが設置された現代社会、警察の捜査網から逃げることはできないでしょう。

そして警察官も一人の人間。
交通警察では「飲酒と無免許は故意・その他はほとんど過失」と言われるほど、警察官は飲酒運転の悪質さを実感しています。
数多くの交通事故を間近で見てきた警察官だからこそ、飲酒運転は絶対に許せないのです。
飲酒運転捜査は自然と熱が入ります。
絶対に許さない・逃がさないと強く思いながらの捜査が展開されるのです。
逃げられませんよ、絶対に

周辺者にならないために!飲食店向けの対応策をご紹介

ここまでの内容で、周辺者の罪が重いことはおわかりいただけたと思います。
となると、特にお酒を提供する飲食店で働く方は、周辺者にならない対応の仕方が気になるところですね。

警視庁は酒類を提供する飲食店へ向けたマニュアルを作成しています。
そのマニュアルから抜粋して、お客様の飲酒運転を根絶するため、ひいては自店が酒類提供罪の罪に問われないための対応策をご紹介します。

来店時の確認

まず、お客様が車や電動キックボードで来たかどうかを確認しましょう。
(※電動キックボードや自転車も車両。飲酒運転は厳禁です!)

「お車や電動キックボードでお越しですか? 申し訳ありませんが、車や電動キックボードを運転なさる方へは、お酒をお出しできません。(車で来店の場合)運転をなさる方はどなたですか?」

この確認があるかないかが大きな違いになりますよ。
お客様が一人で来店した場合、車利用の方には「運転代行を利用するか、御家族等に迎えに来ていただかない限りは、お酒は出せません。」とハッキリ伝えておきましょう。

お客様がグループの場合、帰りの運転を担当する「ハンドルキーパー」が誰か、事前にお客様に確認して、そのお客様にはお酒を提供しないように店員同士で情報共有をします。
ハンドルキーパーについては後述しますので、そちらをご覧ください。

退店時の対応
退店時に運転するお客様にはアルコールチェッカーでの飲酒確認ができるとより安心です。
もし飲酒したお客様が運転して帰ろうとした場合、すぐに止めて説得しましょう。
同時に車両のナンバーを控えておき、止めきれないと感じたら素早く110番通報をして下さい。

飲酒運転をさせないためのマニュアル

一目でわかるメッセージを掲示する

飲酒運転させないためのメッセージを、一目でわかるように伝えましょう。
筆者のおすすめは飲酒運転撲滅のポスターです。
出入口に掲示すれば大きくてわかりやすく、お客様に飲食店のメッセージを伝えることができます。

そのうえで来店時の確認や退店時のアルコールチェックをお願いすれば、お客様も快く対応してくれるのではないでしょうか。
飲酒運転撲滅ポスターは、インターネットからダウンロードすることもできますし、最寄りの警察署に依頼すればもらうことができますよ。

飲酒運転撲滅ポスター

警視庁推奨のハンドルキーパーとは?

警視庁は、グループでお酒を飲む際には帰りの運転手としてお酒を飲まない「ハンドルキーパー」を決めておく「ハンドルキーパー運動」を推奨しています。
ハンドルキーパーを決めることは、飲酒運転だけでなく同乗罪や酒類提供罪を防ぐという点でも非常に有効ですね。

酒席に参加する全員であらかじめハンドルキーパーを決めておけば、お互いに注意しあって気持ちよくお酒が飲めます。
飲食店サイドではハンドルキーパーが人目見てわかるよう、お客様の席におけるステッカーやコースターなどを用意してみてはいかがでしょうか。

警視庁推奨のハンドルキーパー

宴席に車で行くのはご法度!社内の安全管理徹底を

車で出社している同僚を宴席に誘う場合など、安全管理を担当される安全運転管理者様は宴席に出席する社員の車利用状況を把握しましょう。
「車で出社した日、明日も車が必要な日に急な接待が入った」といった場合などは要注意。
だれからも注意喚起がなければ、少し寝れば大丈夫だと思ってつい…という事態が起きてしまうかもしれません。

あらかじめ運転できないよう車のカギを預かっておいたり、同席する人に運転手が酒を飲まないよう注意してみておくよう依頼するなどの対策が必要です。
先述したハンドルキーパー制度を社内でも確立するなどして、はっきりと目でみてわかる飲酒運転根絶対策を検討してみて下さい。

また社内で安全教育を実施する際やちょっとした会話の中でも、飲酒運転周辺者三罪のことを伝えてみて下さい。飲酒運転した本人でなくても罪に問われることを理解していれば、仲間内での注意喚起も自然に発生すると考えられます。
お互いに注意しあって飲酒運転を撲滅し、楽しい宴席にしたいものですね。

アルコールチェッカーを活用して仲間と自分を守ろう!企業安全教育の必要性

飲酒運転は大罪です。
飲酒運転をして検挙されると刑事罰や行政罰がくだるだけでなく、社会的信用を失い、被害者からの民事訴訟が提訴されて経済的負担も多大なものになります。
懲役刑となれば仕事を失い、家族にも多大な負担がかかるでしょう。

そして社会的信用を失い、大きな経済的損失を負うのは企業も同じ。
社員が飲酒運転をしないよう教育を徹底することは、企業の重大な役割と認識されています。
その飲酒運転根絶教育の中に、飲酒運転周辺者三罪の説明を加えてみてはどうでしょうか。
他人事ではない「自分事」として認識を高くもてば、飲酒運転根絶の社風はさらに高まることでしょう。

飲酒運転根絶には、相互の注意喚起がなにより大切です。お互いに注意し見守りあうことが、仲間と自分を守る結果につながります。
アルコールチェッカーの利用は、飲酒状態がすぐに判別できてとても有効な手段。
社内でアルコールチェッカーによる飲酒検知を習慣化させて、飲酒運転の危険から社員を守りましょう。

弊社取り扱いのアルコールマネージャー®の特徴として、アルコール消化予定時刻が表示されるZERO LINE TECHNOLOGYが搭載されているので、自分の飲むお酒の量によって、どれくらいでお酒が抜けるかがわかると大変好評です。
この機会に導入を検討してはいかがでしょうか。

もちろん、アルコールチェッカーだけに頼らずに、会話の様子や呼気の匂いなど、相手のことをよく観察して飲酒状況を確認するようにして下さい。

飲酒運転による悲惨な事故が起きないよう、社会全体で努力を続けてゆきたいですね。

ライター紹介:
元警察官。半年前まで都内警察署で勤務。
在職中は交通部門で働いた経験が10年近くあり、退職後はWebライターとして飲酒運転防止、安全運転教育などの執筆をおこなっている。

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