安全運転管理者とアルコールチェッカー使用義務化

はじめに
2023 年 12 月から施行されたアルコール検知器の使用義務化に伴い、安全運転管理者の役割が一層重要となっています。
本コラムでは、この制度の背景、安全運転管理者の重要性、企業にとっての意義を探ります。

安全運転管理者の選任が必要な事業所とは

安全運転管理者の選任が必要なのは、

乗車定員11人以上の自動車は1台以上、その他の自動車を5台以上使用している事業所

また、使用する自動車の台数が20台以上となる場合、安全運転副管理者の選任も必要となります。
20台以上・40台未満は1人、それ以上になる場合は20台ごとに1人ずつ安全運転副管理者の選任を行います。
なお、自動二輪車1台は0.5台として計算し、50cc以下の原動機付自転車は含みません。

これらの条件に該当する事業所では、安全運転管理者を選任し、適切なアルコールチェックの実施などの業務を行う必要があります。
選任した安全運転管理者は、ドライバーの運転前後のアルコールチェックを行うことが義務付けられています。
白ナンバー車の運用を含め、幅広い業種で適用される規定です。

安全運転管理者になるには条件がある

安全運転管理者になるためには、条件を満たす必要があります。

安全運転管理者の条件

  • 年齢が20歳(※副安全運転管理者を選任しなければならない場合は、30歳)以上の者
  • 2年以上の運転管理の実務経験を有する者
  • 過去2年以内に公安委員会の解任命令を受けたことのない者
  • 自動車使用制限命令違反
  • 過去2年以内に次の違反行為をしたことのない者

ひき逃げ
酒酔い運転、酒気帯び運転、麻薬等運転、無免許運転、妨害運転
酒酔い運転や酒気帯び運転に対し車両や酒類を提供する行為
酒酔い運転や酒気帯び運転の車両に依頼・要求して同乗する行為
酒酔い運転、酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許運転、無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車違反の下命・容認

副安全運転管理者の条件

  • 年齢が20歳以上の者
  • 1年以上の運転管理実務経験を有する者か、3年以上の運転経験を有する者
  • 過去2年以内に公安委員会の解任命令を受けたことのない者
  • 過去2年以内に一定の違反行為をしたことのない者

※一定の違反行為とは、安全運転管理者の場合と同じ

警視庁HPより引用

以上から、誰でも彼でも管理者になれるわけではないということがおわかりいただけるでしょうか。
20歳以上(特定条件下では30歳以上)、2年以上の運転管理実務経験、過去2年以内に重大な交通違反がないことが必要です。
これにより、経験と責任を兼ね備えた人材が求められています。

安全運転管理者未選任によるリスクと罰則

道路交通法第74条3項第5項によれば、自動車の使用者が安全運転管理者や副安全運転管理者を選任する場合、その選任から「15日以内」に一定の事項を自動車使用の本拠地を管轄する公安委員会に届け出ることが義務付けられています。
この規定は、安全運転管理者を解任した際にも同様に適用されます。

また、下記の場合も同様の期間内に適切な届出が必要です。

  • 事業の縮小で自動車の数が基準を下回った時
  • 事業所の移転や閉鎖
  • 人事異動や退職に伴う安全運転管理者の変更

これらは、自動車を使用する事業の運営において、法的に遵守すべき重要なプロセスです。

以前までは、安全運転管理者や副安全運転管理者を任命する基準を満たしている事業所であるのに、

  • これらの役職を選任せずにいた場合「5万円以下の罰金」
  • 選任した後に届け出を怠ると「2万円以下の罰金」

が課される制度がありました。

しかし、2022年4月、安全運転管理者の選任義務違反などに対する罰則が強化。

2022年10月1日からは、

  • 条件に該当しながらも安全運転管理者や副安全運転管理者を任命しない場合「50万円以下の罰金」
  • 安全運転管理者を解任したり、安全運転のための是正措置を命じられた場合にこれに従わなかった場合も「50万円以下の罰金」

必要な手続きは期限内に行わなければ最大5万円の罰金が科せられることも、気をつけなければなりません。

もし安全運転管理者や副安全運転管理者の任命と届出を行わないと、様々な問題が生じる可能性があります。
万が一事故が起きてしまったら、会社の信頼性が大きく損なわれ法的なトラブルや損害賠償問題が生じる可能性も。
そして今いる社員にさえ、安全や職務の重要性を軽んじていると受け取られ社内の信頼を失い、優秀な人材が去っていくリスクも考えられます。

安全運転管理者等の選任(解任)届、変更について

自動車の使用者は安全運転管理者等の選任・変更日から「15日以内」に自動車の使用の本拠地を管轄する警察署を経由し公安委員会に届け出ます。
届出方法は、警察署窓口・警察署へ郵送・警察行政サイトがあります。

安全運転管理者・副安全運転管理者の選任・変更(4種類提出)

  • 届出書(安全(副安全)運転管理者に関する届出書)
  • 戸籍抄本又は本籍の記載のある住民票の写し
  • 運転免許証の写し※運転免許証保持者
  • 運転記録証明書(3年間若しくは5年間のもの)※運転免許証保持者

※運転記録証明は、自動車安全運転センターで発行しています。

記載事項の変更(届出書のみ提出)

事業所名、所在地、安全運転管理者等の氏名、職務上の地位、自動車の台数に変更を生じたとき等

安全運転管理者・副安全運転管理者の解任(届出書のみ提出)

自動車の台数が基準以下になったとき、事業所が別の警察所管内に移転、又は事業所が閉鎖することになったとき等

警視庁HPより引用

事業所の所在地を管轄する警察署交通課、警視庁交通部交通総務課交通安全組織係までお問い合わせください。

安全運転管理者の役割の重要性

これは民法第715条に基づいています。
この条文によると、従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合、従業員だけでなくその雇用主も賠償責任を負うことになります。
しかし、適切な選任と監督が行われていれば、その責任は軽くなる可能性があります。
これは、事故予防の観点から見ると、会社にとって極めて重要な責務と言えます。

安全運転管理者の主な任務は、ドライバーの安全運転を促進し、事故を未然に防ぐことです。
飲酒運転や無免許運転などの深刻な事故は、管理者の適切な指導とチェックで防ぐことが可能です。
従業員の健康状態や免許証の有効期限を確認することは、安全確保において重要な手段です。

さらに、2017年の準中型免許制度導入により、運転可能な車両の種類が変わりました。
そのため、免許証の有効期限を正確に把握することがより一層重要になりました。
元号で表示される日本の免許証では、年度の把握が難しい場合がありますので、特に注意が必要です。
安全運転管理者が従業員の免許証を確認し、有効期限を適切に管理することで、事故のリスクを減らすことができます。

安全運転管理者が負う可能性のある罰則

安全運転管理者が職務を怠った場合、罰則として最大50万円の罰金が科せられる可能性があります。
これは、安全運転管理者の責任を強化し、適切な安全対策を促すためのものです。

企業が負う可能性のある罰則

事故発生時に、企業は法的責任を問われ、罰金や賠償責任が課される可能性があります。
これは、安全運転管理者を適切に選任し、必要な安全対策を講じることの重要性を示しています。

安全運転管理者が立てられない場合の問題

安全運転管理者がいない場合、事故リスクの増加、法的違反、業務の非効率、および法的責任の増加などの問題が生じる可能性があります。
これは、企業の信頼性と運営効率に影響を与え、適切なリスク管理の必要性を示しています。

まとめ

本コラムでは、アルコールチェッカーの使用義勥化と安全運転管理者の重要性について検討しました。
これらの制度は、交通安全を確保し、事故を防ぐために非常に重要です。
企業は、適切な安全運転管理者を選任し、法令遵守に努めることで、リスクを最小限に抑え、社会的責任を果たすことができます。

さぁ今から、「手軽にアルコールチェックの自動化」始めましょう。