【元警察官】が制度をゼロから説明 安全運転管理者は交通事故リスクの防波堤!

安全運転管理者ってなに?ゼロから学ぶ安全運転管理者

突然ですが「安全運転管理者」という言葉は聞いたことがありますか?読んで字のごとく、社内の安全運転を管理する役職です。

企業は保有する社用車の数に応じて安全運転管理者を選任するよう道路交通法で定められており、安全運転管理者は社員が安全に運転できるように安全教育を実施したり運転者情報を把握管理したりするのが業務内容です。

多くの企業で人事部や総務部の方が指定されることが多い安全運転管理者。実際にはなかなか広く知られていない役職ですよね。

筆者は元警察官ですが、企業受付の方に「安全運転管理者の方をお願いします」と伝えても「はい?」と聞き返されることが多かったように思います。

企業にとって縁の下の力持ち的な重要な役職ですが、突然安全運転管理者に指定されてしまったけれどどうすればいいの?そもそも安全運転管理者とは?と焦る方もいるのではないでしょうか。

今回のコラムでは、そんな方へ向けて安全運転管理者についてゼロから説明していきます。

なお、過去コラムでは安全運転管理者の新たな業務であるアルコールチェックについて解説していますので、こちらもあわせて確認してくださいね。

【元警察官】が解説シリーズ

【元警察官】が解説①!知らないと大変!「飲酒運転周辺者三罪」

【元警察官】が解説②!アルコールチェックはいつやる?深夜の連絡は?罰則は?

【元警察官】が解説③!レンタカーとマイカーのアルコールチェック義務:県ごとの違いと安全運転管理者の混乱を解説

【元警察官】推薦!アルコールチェッカーはアルコールマネージャー®が一押しの理由

安全運転管理者の選任義務があるのは社有車5台から!社有車の台数を確認しよう

まずは警察庁のホームページ「安全運転管理者精度の概要」から、安全運転管理者制度の概要をご紹介します。

そもそも道路交通法では

≪一定台数以上の自動車を使用する自動車の使用者は、自動車の使用の本拠(事業所等)ごとに、自動車の安全な運転に必要な業務を行う者として安全運転管理者の選任を行わなければならない。≫

とされています。

ただし、運行管理者等を置く自動車運送事業者、第二種貨物利用運送事業者及び自家用有償旅客運送事業者の事業所は対象外です。

簡単にいうと、緑ナンバーの社有車を保有する会社は運行管理者、白ナンバーの社有車を保有する会社は安全運転管理者を選任しましょうということですね。

そして「一定以上の台数」については

安全運転管理者の選任を必要とする自動車の台数

○ 乗車定員が11人以上の自動車 1台以上

○ その他の自動車 5台以上

※ 大型自動二輪車又は普通自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として計算

※ 台数が20台以上40台未満の場合は副安全運転管理者を1人、40台以上の場合は20台を増すごとに1人の副安全運転管理者の選任が必要≫

と記載されています。

なお、原動機付自転車は台数にカウントされません。

ここで疑問になるのがレンタカーやマイカーを仕事で利用する場合はどう計算するのか問題。この問題は別コラムで詳しく解説していますので、そちらもあわせて御覧ください。

【元警察官】が解説③!レンタカーとマイカーのアルコールチェック義務:県ごとの違いと安全運転管理者の混乱を解説

今回のコラムでは、話がややこしくならないよう社有車を仕事で社員が使っている場合を前提として考えてみましょう。

一般的な乗用車の場合は、5台以上で安全運転管理者の選任義務が発生します。

規定台数以上の車を所有しているのにも関わらず安全運転管理者を選任せずにいると罰則規定がありますので、まだ安全運転管理者を選任していない企業は速やかに届出をするようにして下さい。

20台以上になると、安全運転管理者を補助する人として「副安全運転管理者」の選任も必要になります。

車両台数が増えると必要な副安全運転管理者の数も増えていきますので、社有車の台数をよく確認する必要がありますね。

補足ですが社有車が5台に満たない場合でも安全運転管理者を選任することはできます。

社員の安全運転確保のためにも、台数が少ない会社でも安全運転管理者の設置を是非検討してみていただければと思います。

安全運転管理者はだれでもなれるわけじゃない!安全運転管理者になるために必要な要件をチェック

安全運転管理者はだれでもなれるわけではなく、選任する時には社内で要件に該当する適切な人物を選ばなくてはなりません。

安全運転管理者になるために必要な要件と欠格事項がありますので確認してみましょう。

必要な要件は以下の二つ。

・20歳以上であること

・自動車の運転の管理に関し2年以上の実務の経験を有する者であること

ここでは20歳以上とされていますが、社員の安全運転を管理するという業務内容上なるべく社員への発言力が強い人物が望ましいでしょう。

そして実務経験2年以上とは実際に安全運転管理者の経験が2年必要なわけではなく、総務部門等で運行管理に関する実務を行った経験があれば足りるとされています。

次に欠格事項については、下記のように警察庁ホームページに記載されています。

≪・過去2年以内に都道府県公安委員会による安全運転管理者等の解任命令を受けた者

・次の違反行為をして2年経過していない者

酒酔い・酒気帯び運転

麻薬等運転

妨害運転

無免許運転

救護義務違反

飲酒運転に関し車両等を提供する行為、 酒類を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為、無免許運転に関し自動車等を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為

自動車の使用制限命令違反

・次の違反を下命・容認してから2年経過していない者

酒酔い・酒気帯び運転

麻薬等運転

過労運転

無免許運転

大型自動車等の無資格運転

最高速度違反

積載制限違反運転

放置駐車違反≫

なんだか違反名がたくさん記載されていて目がちかちかしますね。

つまり本人が飲酒運転・無免許運転・妨害運転・ひき逃げなどの重大な交通違反行為をしていないことや、部下の飲酒運転・無免許運転・速度超過運転・放置駐車などを容認していないことが必要とされているのです。

社員の安全を確保するための業務なので、違反がなく見本になれる人を選ぶのが良いとされていることがわかりますね。

実際に重大な違反をした人に安全教育をされても腑に落ちないことになりますので、安全運転管理者の選任は企業の責任として適切な人物を選ぶようにして下さい。

安全運転管理者に選任されたら速やかに届け出をしよう!移転や変更の際の届出も忘れずに

安全運転管理者に選任されたら、まずは速やかに届け出をするようにしましょう。

≪選任した日から15日以内に都道府県公安委員会に届け出なければならない≫とされています。必要書類をそろえるのに時間がかかるなどで多少遅れてしまってもペナルティはありませんが、なるべく速やかに管轄の警察署に届け出るようにして下さい。

届け出方法については県によって異なりますので、各県警察のホームページやお近くの警察署に問い合わせてみて下さい。

住民票や運転記録証明書が必要になることが多いです。

運転記録証明書は発行までに時間がかかることも多いので、届け出方法と合わせて確認するようにしてください。

ちなみに運転記録証明書とは、自動車安全運転センターが発行する過去の事故や違反歴などが記載された証明書のこと。

運転記録証明書の申請方法も警察署に問い合わせると教えてくれますよ。

自動車安全運転センター 申請方法

安全運転管理者は基本的に管轄の警察署で届け出が受理され、警察署ごとに管理されます。

会社移転などの際には届け出内容の変更が必要ですので、忘れないようにして下さい。

移転した際の住所変更が届け出されないと、安全運転管理者法定講習のお知らせなどが届かなくなってしまいますので注意が必要です。

また、安全運転管理者が変更した場合も届け出が必要です。

社内では変更手続きが済んでいても警察に届け出忘れていた、ということがないように気を付けて下さいね。

安全運転管理者に求められるリスクマネジメント!交通事故のリスクについて理解しよう

安全運転管理者の業務内容を項目立てて説明するのは次回コラムにさせていただき、今回は基本の心構え的なことを解説したいと思います。

安全運転管理者が一番理解していないといけないのは、交通事故のリスクです。

仕事をしていると、あらゆるリスクヘッジを無意識にしていますよね。

この案件は納品が期日に間に合わない危険性があるから早めに発注しよう、自分で判断しないで上司に一度確認の電話をしてみるかな、など想像できる危険を回避しながらスムーズに仕事ができるよういつも考えているのではないでしょうか。

安全運転管理者が一番避けたいリスクは交通事故。

社員が車を使って仕事をしている以上、交通事故のリスクは常に潜んでいます。仕事中の交通事故は運転者だけでなく企業にも責任が生じ、その責任は重大です。

被害者への損害賠償は多額となり、事故原因が業務中の飲酒運転や過労運転などであれば報道による企業のイメージダウンと信用失墜のダメージは図りしれません。

交通事故には運転者と企業に課せられる4つの責任があることを理解しておきましょう。

  • 刑事上の責任

交通事故を起こした加害者は、懲役・禁固・罰金等の刑事罰が科されます。

企業側には、業務で運転する場合に使用者が運転者へ違反行為を命令したり容認したりすることがないよう使用者への罰則が定められています。

また企業には運転者が違反行為をしないよう監督する責任があり、飲酒運転等の違反行為には企業側も処罰される両罰規定があることも理解しておきましょう。

  • 行政上の責任

交通事故を起こした運転者には運転免許の取り消しや停止といった行政処分が下ります。

企業に対しては、自動車の使用制限などの処分が行われます。

  • 民事上の責任

業務上の交通事故の場合は運転者本人だけでなく、企業も使用者責任や運行供用者責任を問われ賠償責任を果たさなければならなくなります。

交通事故の裁判では、企業に刑事責任が問われない場合でも民事責任として損害賠償が問われるケースも発生しています。

  • 社会的責任

企業に課されるのは法的な責任だけではありません。

企業は社会に貢献し、地域の安全を確保し、従業員とその家族を守る責任があります。

社員の交通事故は、企業の社会責任を問われる事案に他なりません。

その対応に法的な正解はなく、信用回復には長い時間と企業努力が必要です。

安全運転管理者は交通事故リスクの防波堤

交通事故の危険性が理解できたら、次は交通事故を防ぐための方法を考えましょう。

確かにもらい事故など防ぎようのない交通事故というものは存在します。しかし一方で、多数の交通事故は防ぐことのできるものと言われています。

安全運転管理者は社員の交通事故を防ぐために、日頃から安全教育を実施し、車両を点検整備し、運転者の体調を確認し、運転特性や技術を把握し、無理のない運行をしているか記録を確認し、飲酒状態がないかチェックをするといった細かな業務を行う必要があります。

また、安全運転管理者は安全運転管理に必要な知識を身に着けるため、年に一度の法定講習を受講することとされています。

せっかくの機会なので受講後の社内の安全教育に役立ててみてはいかがでしょうか。

法定講習の日程は県によって異なりますので、お近くの警察署に問い合わせるかホームぺージで確認してみて下さい。

時に耳に痛い注意もしないといけない安全運転管理者。先述したように、適切な人物を選任することがとても重要です。

そして安全運転管理者が業務をしやすいように、周囲が素直に耳を傾け協力できる体制を整えていただければと思います。

安全運転管理者は、企業(使用者)から安全運転管理業務を遂行するための権限を与えられます。権限を持った立派な役職なので、堂々と安全運転管理の業務を遂行して下さいね。

(安全運転管理者に必要な権限が与えられず、業務遂行に必要な機材が用意されなかった場合は、使用者の側に50万円以下の罰金と是正命令が下ります。)

広く知られていませんが、企業にとってとても重要な役職の安全運転管理者。

必用な機材をしっかり用意し、自信をもって社内の情報把握と安全教育を行ってください。

必用な機材を揃えよう!アルコールマネージャー®は安全運転管理者の強い味方

最後に、いきなり安全運転管理者になってしまい困っている方の強い味方として、当社のアルコールマネージャー®をご紹介します。

昨今安全運転管理者が注目されたのは、アルコールチェック義務化の法規定されたことが大きな理由といえるでしょう。

とりあえずアルコールチェックをしなければと焦っている方は、是非当社のアルコールマネージャー®を導入してみて下さい。

高性能なアルコールチェッカーで誤判定の心配がないだけでなく、クラウド管理されているので記録の手間も省けます。

写真付きで判定記録がクラウドに自動送信されるので導入後すぐに簡単に使える上、なりすましなども防げてトータルコストも安いおすすめ商品です。

また、当社では訪問やオンラインでの安全教育も無料で実施しています。安全運転管理者の皆様からのご相談対応も実施しております。

安全運転管理者になったものの勝手がわからないと悩む方は、是非一度お気軽に当社にご連絡下さい。社員一同お力になるべく尽力致します。

今回のコラムでは安全運転管理者制度の概要と安全運転管理者の重要性について解説しました。

次回コラムでは安全運転管理者の業務内容について解説していく予定ですので、是非次回も御覧下さいね。

ライター紹介:いのともみ

元警察官。半年前まで都内警察署で勤務。在職中は交通部門で働いた経験が10年近くあり、退職後はWebライターとして飲酒運転防止、安全運転教育などの執筆をおこなっている。

さぁ今から、「手軽にアルコールチェックの自動化」始めましょう。