筆者紹介

いのともみ
元警察官ライター
2023年まで都内警察署で勤務。在職中は交通部門で働いた経験が10年近くあり、退職後はWebライターとして飲酒運転防止、安全運転教育などの執筆をおこなっている。
令和7年4月6日(日)から15日(火)までの10日間、「春の全国交通安全運動」が実施されます。
道路交通に関係する各所だけでなく鉄道各社でも同時に運動が実施されるので、交通機関で「~全国交通安全運動実施中~」のポスターや看板などを見かけたことある方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、全国交通安全運動ってなに?から交通安全運動の活動重点、イベント情報までお伝えしていきますよ!
なお、本コラムは内閣府公式ホームページを参考にしています。
目次
全国交通安全運動はみんなに注目してほしい10日間!
「全国交通安全運動」の文字を見かけたことはあっても、具体的に何をしているのかよくわからない方も多いのではないでしょうか。
「全国交通安全運動」の目的について、まずは内閣府ホームページからの引用をご紹介。
目的
本運動は,広く国民に交通安全思想の普及・浸透を図り,交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けるとともに,国民自身による道路交通環境の改善に向けた取組を推進することにより,交通事故防止の徹底を図ることを目的とする。
か、堅苦しい…!!
つまり「みんなで交通安全の意識を高めよう!交通ルールとマナーを身につけよう!ついでに道路が安全かどうか、確認してね!」といった内容です。とてもざっくりしたまとめですが。
全国一斉で行われる運動なので、もちろん国が主催。主催者名もそうそうたる顔ぶれです。
主催
内閣府,警察庁,総務省,法務省,文部科学省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省,防衛省,都道府県,市区町村,独立行政法人自動車技術総合機構,独立行政法人自動車事故対策機構,独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構,自動車安全運転センター,軽自動車検査協会,(一財)全日本交通安全協会,(公財)日本道路交通情報センター,(一社)全日本指定自動車教習所協会連合会,(一社)日本二輪車普及安全協会,(一社)日本自動車連盟,(公社)日本バス協会,(公社)全日本トラック協会,(一社)全国ハイヤー・タクシー連合会
この主催に加え、交通・鉄道・メディア・教育・保険等156団体が協賛して大々的に実施されるのが、年に2回行われる「全国交通安全運動」。
ここまでの内容で、なんか力入っている運動だな…!というのが伝われば上々です。いよいよ本題に入りましょう。
活動重点から見えてくる、交通安全のポイント3つ
全国交通安全運動には毎回活動重点があり、関係機関はその重点を意識して広報活動等を行います。
今年の活動重点は以下の3つ。
- こどもを始めとする歩行者が安全に通行できる道路交通環境の確保と正しい横断方法の実践
- 歩行者優先意識の徹底とながら運転等の根絶やシートベルト・チャイルドシートの適切な使用の促進
- 自転車・特定小型原動機付自転車利用時のヘルメット着用と交通ルールの遵守の徹底
この3点が全国重点で、各都道府県で実状に合わせた重点が2つほど追加されます。
この重点は、国は国民に対して意識してほしい交通安全のポイント。
堅苦しい内容ですが、内閣府公式ホームページではこの重点の趣旨についても解説されていますので、この機会に一度かみ砕いて解説してみます。
重点1 こどもを交通事故から守ろう!
交通安全運動の重点に必ず入る「こどもの交通事故防止」。
新入学の時期に事故が増えることから、春の運動の際は特に力を入れて広報と安全教育が実施されています。
- 幼児・児童の死者・重傷者は歩行中や自転車乗車中の割合が高い
- 4月から6月にかけて死者・重傷者が増加する傾向にある
- 歩行中の児童の死者・重傷者は登下校中が全体の約4割を占める
といった理由から、「通学路をはじめとする道路においてこどもが危険にさらされている状況にある」と述べられています。
そのための対策として
・安全に通行できる道路交通環境を確保する
・正しい横断を実践できるよう促す
の2点が挙げられており、この2点を実行するべく警察を初め関係各所で様々な努力をしています。
筆者は元警察官なので、4月から6月の時期は「横断歩道の渡り方教室」「自転車教室」などの安全教育に奮闘していました。
安全運動の時期に合わせた教室開催依頼も多く、学校や保育園・幼稚園も意識してくれているんだなと感じたことを覚えています。
こどもの交通安全については過去コラムで詳しく取りあげていますので是非ご覧ください。
「正しい横断歩道の歩き方・子供への伝え方」について解説していますので、特に小さなお子様のいるご家庭の方は一読の価値ありです。

子供を交通事故から守るには… 今日から実践できるポイントを伝授
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道路交通環境については、警察や自治体で通学路などの道路安全点検を実施しています。
ミラーが曲がっていて見えない、木が覆っていて信号が見えない、ガードレールが曲がっていて危険など、もし危ない箇所を見つけたら最寄りの交番や役所に伝えてみて下さい。
予算と戦いながら(笑)、道路環境を整えてくれますよ。
重点2-① 横断歩道は歩行者優先!危険運転は絶対ダメ!
重点②では、運転時に注意するべき2つの内容がミックスされています。
1つめは運転中の「横断歩道歩行者優先」と「ながら運転の撲滅」
2つめは「シートベルト・チャイルドシートの着用」です。
重点①と同じく、
- 横断歩道横断中の死亡事故では自動車側の多くが第1当事者(過失の大きい方)であり、横断歩行者妨害等の法令違反が認められる
- 携帯電話を使用しながら走行する「ながら運転」や「飲酒運転」「あおり運転」などの危険運転による交通事故も後を絶たない
- 後部座席のシートベルトやチャイルドシートの使用率がいまだ低調である
と問題提起されています。
まずは横断歩行者妨害について解説してみましょう。
横断歩行者妨害とは、横断歩道において歩行者優先の原則に従わずに歩行者の横断を妨害する違反行為です。
実は日本は世界から見て「横断歩道で車が止まらない国」なんだそう。
特に信号のない横断歩道では、本来歩行者がいないか確認をして、歩行者がいる場合は停止しなければならないところ、実際は歩行者が車の通行が途切れるのを待っていることがほとんどではないでしょうか。
東京オリンピック開催にあたって、このままではいけないと警視庁ではこの横断歩行者妨害の取締りに力を入れていました。そして現在も継続して取締りは強化されています。
横断歩道、特に信号のない横断歩道では歩行者が優先。
歩行者がいないかよく確認をして、車は歩行者に道をゆずりましょう。
信号のある交差点でも、歩いている歩行者を急かすような運転は禁止です。
常にゆとりある運転を心がけましょう。
続いて問題提起されているのは、危険運転です。
「ながら運転」「飲酒運転」「あおり運転」などの悪質危険な運転はもってのほか。
特に携帯電話を使用しながらの「ながら運転」による事故は増加しています。
運転中は携帯電話をかばんに入れ、運転に集中しましょう。
飲酒運転やあおり運転は非常に危険です。
飲んだら乗るな、乗るなら飲むなは絶対の鉄則。
他者を妨害するような危険運転は大事故の元。
どちらも絶対にやめて下さい。
車は便利な乗り物ですが、運転者によっては動く凶器になるもの。
車を乗り物にするか凶器にするかは、あなた自身の心がけひとつ決まります。
どうか思いやりとゆずりあいの心を持った、優しいドライバーでいて下さい。
重点2-② 命を守るシートベルトとチャイルドシート!

シートベルトとチャイルドシートは命を守る命綱。
後部座席もしっかり着用する必用があるのですが、着用率はいまだ低迷しており問題視されています。
特にチャイルドシートは年齢が上がるほど着用率が低くなっています。
筆者も子供がいるのでよくわかりますが、じっとしていられないのが子供。
動き出して5分でまだー?と騒ぎ出し、チャイルドシートからは脱出し、おやつや動画で気を引くドライブが大変なことはよくわかります。
しかしそれでも、シートベルトは必ず着用させて下さい。
大人も子供も、前席も後部席も、みんな着用です。
いざ事故が起きた時、シートベルトがないと身体は固定されず車内に叩きつけられます。
赤ちゃんを抱っこしている場合、お母さんの手から飛び出し叩きつけられたり、お母さんの身体に押しつぶされたりもします。
その衝撃は重大なもので、死因に直結するほどです。
シートベルトは間違いなく命綱。
家族の命を守るためにも、全員で着用しましょう。
重点3 自転車・電動キックボードはルールを守ってヘルメット!

自転車の交通ルール、守れていますか?
自転車乗用中のヘルメット着用が努力義務であること、自転車のながら運転や飲酒運転が罰則の対象になったことをなど知っていますか?
自転車のルールはどんどん変化し、新しくなっています。
昨今の自転車事故多発を受けて、対策が強化されているのですね。
自転車のルールと罰則強化についても過去コラムで取り上げていますので、あわせて確認してみて下さい。

元警察官が自転車の交通ルールを解説!ながらスマホは?飲酒運転は?罰則化とは?
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内閣府発表の活動趣旨によると、
・自転車乗用中の交通事故死傷者数は10歳以上25歳未満の若年層の割合が高い
・死者の半数以上は頭部に致命傷を負っている
・ヘルメット非着用時の致死率は,着用時と比較して高い
・自転車乗用中の死者の多くに法令違反が認められる
と述べられています。
自転車のヘルメットは現在努力義務ですが、シートベルトと同じく命綱の役割を担っています。
自転車に乗る時はヘルメットを着用して、交通ルールを守りましょう。
自転車の交通ルールは「自転車安全利用5則」などでわかりやすくまとめられています。
チラシと合わせてご紹介しますので、ご自身の自転車運転を振り返りながら確認してみて下さいね。

【自転車安全利用5則】
1車道が原則、左側を通行 歩道は例外、歩行者を優先
2交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
3夜間はライトを点灯
4飲酒運転は禁止
5ヘルメットを着用
出かけてみよう!春の全国交通安全運動イベント
交通安全運動実施期間中は、交通安全を呼びかけるためのイベントとして様々な催しが企画されています。
春のお出かけ予定に、お近くの警察署や自治体の主催するイベントはいかがでしょう。是非検索してみて下さいね。
楽しいイベントを通して交通安全を意識するきっかけになると思いますよ。
イベント例① 新宿区交通安全パレード(3月20日)
警視庁音楽隊・鼓隊・カラーガード、交通少年団・早稲田大学応援部吹奏楽団等による華やかなパレード。
伊勢丹前から新宿駅東口駅前広場までの新宿通りで開催されます。
なお、当日は交通規制があるようなので注意して下さい。
新宿区交通安全パレード・第四方面交通少年団統一行事パレード:新宿区
イベント例② 大阪府「春の全国交通安全運動」キャンペーン(4月7日)
特別ゲストにモデル・タレントゆうちゃみさんを迎え、ゆうちゃみさんと警察官による交通安全教室や白バイ隊出発式を観覧できるイベント。
場所は大阪府庁本館正面玄関前で観覧無料だそう。
荒天による中止があるそうなので、詳細は大阪府ホームページを確認して下さい。
令和7年「春の全国交通安全運動」キャンペーンを実施します/大阪府(おおさかふ)ホームページ
「春の全国交通安全運動」にちょっとだけ注目してみて
勘違いされがちなのですが、交通安全運動の目的は「関係機関が訓練や講習をして事故防止を目指すこと」だけではなく、「国民に広く交通安全を意識してもらうこと」です。
もちろん交通関係各所は、交通事故防止のためにより一層の努力をすべき10日間。
けれど、それだけでは足りません。
普段「交通安全は意識したことがありません」という人にこそ注意を向けてほしいのが、交通安全運動の10日間なのです。
関係機関が一生懸命「交通安全意識してね!」と広報しても、聞く側が右から左に聞き流してしまうと意味がありません。
交通安全運動期間中に私達にできること、第一は「ちょっと注目すること」です。
様々な広報にちょっとだけ耳を傾けて下さい。
ちょっとだけ意識を向けて下さい。
そのちょっとだけを積み重ねて、交通事故のない社会を目指すのが「全国交通安全運動」の本来の目的なのです。
本コラムも、その「ちょっとだけ」の一助になれればと願います。
あなたが少し交通安全に注目することで、ひとつ交通事故が減るかもしれません。
イベントに出かけてみる、SNSを見てみる、チラシやポスターを読んでみる…。
どんな方法でもかまいません。
「ちょっとだけ」交通安全の意識を高めてみて下さいね。