元警察官が自転車の交通ルールを解説!ながらスマホは?飲酒運転は?罰則化とは?

ライター:いのともみ

2023年まで都内警察署で勤務。在職中は交通部門で働いた経験が10年近くあり、退職後はWebライターとして飲酒運転防止、安全運転教育などの執筆をおこなっている。

令和6年11月1日から自転車のながらスマホと飲酒運転に対する罰則が強化されました。

ニュースや当サイトのコラムでも取り上げられているので耳にしたことがある方も多いかと思いますが、そもそも自転車の安全運転や交通事故防止などについて、どれくらい知識がありますか?

自転車の交通ルールはなかなか教わる機会がないもの。

「そういえば子供の頃、小学校に警察官が来て自転車教室をやったような…?」くらいのおぼろげな記憶ではないでしょうか。

大人になるにつれて忘れてしまう自転車の交通ルール、この機会にもう一度勉強してみましょう。

自転車事故が多発する現代社会では、事故のリスクは決して他人事ではありません。

実際に警察庁発表の自転車事故件数のグラフを見ても、毎年自転車事故の割合は増加の一途をたどっていることがよくわかります。

本コラムでは自転車の交通ルールについてわかりやすく解説していますので、自分と家族を守るため、このコラムを読んで今日から自転車交通安全に取り組んでみて下さい!

出典:自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~|警察庁Webサイト

自転車事故で高額賠償金請求!甘くみてはいけない自転車事故の現実

自転車は子供から大人まで気軽に乗れる乗り物で、運転免許証も必要ありません。

ですが万が一交通事故を起こして相手に損害を与えてしまった場合、刑事上の責任と民事上の責任が発生します。

・刑事上の責任…相手を怪我させた場合には「過失致傷」等といった刑法上の責任のこと

・民事上の責任…損害を負わせた相手への賠償金支払い等といった民法上の責任のこと

まずは実際に高額請求が発生した自転車事故の事例をご紹介しましょう。

判決認容額(支払いを命じられた額)9521万円

【男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。(神戸地方裁判所、2013年7月4日判決)】

判決認容額(支払いを命じられた額)9266万円

【男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。 (東京地方裁判所、2008年6月5日判決)】

判決認容額(支払いを命じられた額)6779万円

【男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38 歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。 (東京地方裁判所、2003年9月30日判決)】

判決認容額(支払いを命じられた額)5438万円

【男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。 (東京地方裁判所、2007年4月11日判決)】

(参考:日本損保2024改訂.indd

いかがでしょうか。

1億円近い高額な賠償請求がされた重大事故事例の一部ですが、事故内容をよく読んでみると子供の事故、車道の斜め横断、片手ハンドル、信号無視など実は自転車においてよくある違反ばかり。

普段の自転車運転を振り返ると、やばいぞと心当たりのある方もいるのではないでしょうか。

自転車の交通事故発生件数は非常に多く、特に都市部では、自転車利用の方が多い分より危険性は増します。

自転車事故のリスクに備えてまず大切なことは、事故を起こさない安全運転を心がけること。そして万が一に備えて自転車保険に加入しておくことも忘れてはいけません。

自転車の運転はここに注意して!今日からできるチェックポイント ~交差点編~

自転車の事故発生状況で高い割合を占めるのは、交差点における交通事故。

警察庁出典のグラフからもわかるとおり、自転車と自動車の交通事故で一番多いのが出会い頭衝突、次に多いのが交差点の右左折時です。

そこでまずは、今日から実践してほしい交差点での自転車ルールを解説しましょう。

自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~|警察庁Webサイト

【自転車交差点ルール① 一時停止は必ず止まれ!】

自転車は車両なので、一時停止標識に従わなくてはいけません。一時停止標識のある交差点では必ず停止線で一時停止し、片足を地面につけて右左右。安全確認をしましょう。

一時停止標識のある交差点や見通しの悪い交差点では、必ず一時停止をするようにして下さい。

【自転車交差点ルール② 信号順守は当たりまえ!】

信号を守ることは、交通安全の基本中の基本。幼稚園に通う幼い子供でも理解できている内容ですよね。

けれど大人になると信号無視が発生しがちなのも悲しい現実。あなたも日頃の慣れや経験則から過信して信号無視をしていませんか。

信号無視は重大な交通違反です。絶対に信号は守るようにして下さい。

【自転車交差点ルール③ 歩行者に要注意!安全確認を忘れずに】

交差点は自動車や自転車だけでなく、歩行者も入り乱れる危険地帯です。歩行者に気づかずに走行していないか、安全確認右左右。

死角から子供が飛び出してくるかもしれませんし、横断歩道を渡り切れない高齢者が残っているかもしれません。

自転車は進行方向に意識が集中しがちです。周囲の安全確認も忘れずに行いましょう。

今日からできるチェックポイント~走行編~

続いては走行編のチェックポイントです。

道路上をまっすぐに進行していても、事故の危険は潜んでいるもの。今日から意識してほしいチェックポイントをまとめました。

同時に自転車安全利用五則も確認してみて下さいね!

【自転車走行ルール① 車道が原則、左側を通行 歩道は例外、歩行者を優先】

これは自転車安全利用5則ひとつめの内容と同じで、走行場所に関するルールです。

まだ浸透しきっていないのか、いまだに逆走している人をよく見かけます。

日本の道路は左側通行。自転車も車の仲間なので、車道の左側を走りましょう。

(ちなみになぜ日本は左側通行なのか…その昔、日本では武士が刀を左腰に帯刀していたため、すれ違いざまに刀同士がぶつからないよう自然と道の左側によって歩いていた結果、左側通行になったという一説もあります。面白いですね。)

歩道は歩道通行可の標識がある場合や、13歳未満の子供又は70歳以上の高齢者、身体に障害がある人が運転する場合、交通状況をみてやむを得ない場合に例外的に走行できます。

歩道を走る際は歩行者を優先して、低速度で安全に走るようにしましょう。

【走行ルール② 急な進路変更は事故を呼ぶ!後方確認を忘れずに】

車を運転していて自転車にヒヤッとする瞬間は、前を走る自転車が駐車車両などを避けようとして急に膨らんできた時。車を運転したことがある人なら一度は経験があるのではないでしょうか。

自転車で走行している時に駐車車両等を避ける際は、進路変更をする意識を持ちましょう。

後方の車両を確認してから、安全に進路変更するようにして下さい。

出来れば手信号(右手を水平に伸ばすハンドサイン)で後続車に進路変更することを伝えてられるとよりグッドですね。

いきなり手を伸ばすと危険なので、手信号の前にも安全確認を忘れないように注意して下さい。

【走行ルール③ 携帯利用はとまってから!ながらスマホは罰則適用へ】

これまで注意警告止まりだった、携帯電話を利用しながらの自転車走行。11月1日の法改正で罰則が適用されるようになりました。ながらスマホの罰則は以下2種類です。

・携帯電話を手に持ち、使用しながら又は画像を注視しながら自転車を運転した場合

(自転車運転中に「ながらスマホ」をした場合)

→携帯電話等使用等(保持)…罰則:6カ月以下の懲役又は10万円以下の罰金

・携帯電話を使用又は画像を注視しながら運転をして、事故などの交通の危険を生じさせた場合

(自転車運転中の「ながらスマホ」により交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合)

→携帯電話等使用等(交通の危険)…罰則:1年以下の懲役又は30万円以下の罰金

ながらスマホはとても危険。携帯電話を使用するときは、一度停止してから安全に利用するようにしましょう。

【走行ルール④ ヘルメットで命を守る!】

自転車の交通事故で亡くなった方のうち、約5割の方の致命傷部位が頭部でした。

こういった統計結果を踏まえ、令和6年4月1日から自転車のヘルメット着用が努力義務化されています。

いざという時のためのヘルメット、確実に着用して自分の命を守りましょう。

【走行ルール⑤ 飲酒運転ダメ、ゼッタイ。自転車も飲酒運転厳罰化】

ながらスマホと同時に自転車の飲酒運転も厳罰化されています。

これまで安全な走行ができない状態の「酒酔い運転」にのみ罰則があったのですが、酒酔い運転に加えて、体内から一定量のアルコールが検出された場合の罰則である「酒気帯び運転」も適用されるようになりました。

自転車といえど、飲酒運転は絶対にダメです。

前日のお酒が残っているかもと感じた場合は、自転車の運転前にもアルコールチェッカーで確認をするようにしましょう。

自転車も車の一種、飲酒運転は犯罪で自転車 飲酒運転す。「飲んだら乗るな」を忘れずに。

自転車の酒気帯び運転、ほう助に対する罰則

飲酒して自転車を運転することは禁止されており、これまでは酩酊状態で運転する「酒酔い運転」のみ処罰の対象でしたが、今般の道交法改正により「酒気帯び運転」(血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で運転すること)についても罰則の対象となります。

また、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供したり、自転車を提供したりすること(酒気帯び運転のほう助)も禁止です。

禁止事項

・酒気を帯びて自転車を運転すること。

・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供すること。

・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供すること。

・自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗すること。

令和6年(2024年)11月からの自転車の酒気帯び運転に関する罰則内容

酒気帯び運転

3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

【飲酒運転3罪の車両に自転車が含まれます。】

・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合

自転車の提供者に3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合

酒類の提供者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

・自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合

同乗者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

※アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で自転車を運転する行為は「酒酔い運転」とされ、今般の改正道路交通法施行以前から罰則として5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が規定されています。

自転車の青切符の取締りについて

今般の改正道路交通法においては、ながらスマホの罰則強化等に加え、自転車の交通違反に対して反則金を納付させる、いわゆる「青切符」による取締りの導入が規定されました。

この青切符による取締りは16歳以上を対象とし、113種類の違反行為を適用範囲としています。

特に、信号無視や一時停止無視、携帯電話を使用しながらの運転等、重大な事故につながる可能性のある違反行為に対しては、重点的に取り締まることが予定されています。

青切符による取締りは、法律の公布(令和6年(2024年)5月24日)から2年以内に施行される予定で、反則金の金額等の詳細は今後政令で定められる予定です。

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自転車も飲んだら乗るな!高い意識で飲酒運転を撲滅しよう

昨今のサイクルブームで自転車通勤を始めた方も多いのではないでしょうか。

自転車は便利で手軽な乗り物ですが、自転車も車両です。

交通ルールを守って正しく乗らなければ、事故の危険はすぐそこに潜んでいるのです。

通勤に自転車を使っている方や最寄り駅まで自転車で行き電車に乗る方など、多くの人が自転車を使う現代社会。

その社会の一員として、飲酒運転撲滅の意識を高く持ち続けましょう。

会社近くで飲み会をして、電車で帰宅した深夜の帰り道。

家まであと少し、駐輪場には朝乗ってきた自転車。

明日も出勤で早く帰りたいあなた。

「明日の朝、自転車ないとしんどいし…」

「少しだけなら大丈夫でしょ…」と、つい自転車に乗っていませんか?

気持ちはよくわかります、本当に。

でも、そのちょっとの油断が命取りになってしまいます。

あと少しだからこそ歩きましょう、自転車は押して歩けば問題ありません。

飲酒運転、ダメ絶対。

前抱っこはNG、おんぶはOK!幼児用座席付き自転車のルールを知ろう!

自転車利用シーンで多いのが、子連れでの自転車利用です。

幼児用座席が設置された自転車を利用して保育園の送り迎えをしている保護者の方もよく見かけますね。

何歳まで自転車の幼児用座席に乗せてもいいのかについては、厳密には都道府県によって異なりますが、おおむね6歳までや小学校入学前までとされています。

子供が二人いる場合には以下の方法で利用します。

・前後に幼児用座席を設置した自転車を利用

・一人を幼児用座席に乗せ、もう一人をしっかりとおんぶひもで括っておんぶする

おんぶできる年齢についても都道府県によって異なるので、お住まいの都道府県について調べてみて下さいね。

絶対にNGなのが、抱っこ紐などで前抱っこをして自転車に乗ること

前抱っこは、実はとても危険な行為です。いざ事故にあって転倒した時、前抱っこしているとお子さんが保護者さんの身体につぶされてしまう恐れがあります。

大切な子供を守るために、前抱っこはNGと覚えておいて下さい。

また、4人乗りはどんな状況でもダメですので、大人1人に対して子供が3人以上の場合、自転車利用は断念しましょう。

自転車はルールを守って安全に!楽しいサイクルライフを送ろう

自転車の交通ルールは、学ぶ機会が少ないもの。しかし自転車事故の危険はすぐ目の前に潜んでいます。

安全運転のために大切なこと、それは今回このコラムを読んで下さったように時々自転車のルールを確認する機会をつくることです。

日頃つい忘れがちな注意点などを時々思い返しながら、反復して交通ルールを学ぶように心がけましょう。

当社では、飲酒運転防止インストラクターが無料で飲酒運転防止講習やセミナーを定期的に開催しています。

この機会に是非ご利用下さい。

自転車は安全にルールを守って乗れば、楽しくて快適な乗り物。

電動自転車やロードタイプの自転車など種類も豊富ですので、目的に合わせた自転車を安全に利用して、快適なサイクルライフを送ってくださいね。

ライター紹介:いのともみ

元警察官。2023年まで都内警察署で勤務。在職中は交通部門で働いた経験が10年近くあり、退職後はWebライターとして飲酒運転防止、安全運転教育などの執筆をおこなっている。

さぁ今から、「手軽にアルコールチェックの自動化」始めましょう。