なくならない交通事故と安全運転管理者の必要性
昨今世間では飲酒運転撲滅が広く周知されており、企業のアルコールチェックも浸透してきました。
しかし今でも痛ましい交通事故がなくならないのも悲しい現実。会社で飲酒検知実施後にお酒を飲んで死亡事故を起こしたトラック運転手のニュースも報道されています。
家族3人死亡事故でトラック運転手逮捕 会社の検査後に飲酒の疑い
検知後に飲酒するなんて…!と叫びたくなるようなこのニュース。
安全運転管理者からするとたまらない内容ですが、万が一アルコール検知を実施していなかった場合の企業責任を考えるとさらに恐ろしいところ。
こうした事故が実際に起きていることからも、安全運転管理者が企業コンプライアンスにとっていかに大切な役割であるか実感できるかと思います。
安全運転管理者が届出をしただけのお飾り状態になり機能しなくなってしまうと、いざ社員が事故を起こした際に企業側にも責任が問われる事態となってしまうことも。
安全運転管理者に選任された方は、責任をもって社内の安全運転管理に努めなければなりません。
ですが安全運転管理者という役割が一般にあまり知られていないのもまた事実。アルコールチェックについてはニュースやネットでよく見るけれど、細かい業務内容についてはわからないことも多いですよね。
そこで元警察官である筆者が安全運転管理者の業務内容を解説するコラム、第二弾です。
安全運転管理者に選任されたけれど実際の業務内容がよくわからない、とお悩みの方は前回コラムとあわせて是非読んでみてくださいね!
なお、本コラムは弊社安全運転管理者が受講した、神奈川県安全運転管理者法定講習資料「再点検!安全運転管理~見直そう自社のリスクマネジメント~」を参考に作成しています。
安全運転管理者には年に一度の法定講習の受講が義務付けられており、この法定講習で必用な知識を得ることが出来るようになっています。郵送で会社に届く案内に従って申し込みが必要ですので、受講忘れがないように気を付けて下さい。
業務6 運転前後の酒気帯びの有無の確認
≪運転前後の運転者が酒気を帯びていないかを、目視等とアルコール検知器を用いて確認する≫
安全運転管理者の業務6は、法改正を受けて新たに追加されたアルコールチェックの項目です。
安全運転管理者にとっては一番のホットワードかと思いますが、社内でのアルコールチェック方法は確立されているでしょうか?
冒頭でもご紹介したようにアルコールチェック義務化の法改正以降、業務中の事故に関してアルコールチェックがされていたかどうかも注目して報道されています。
正しいアルコールチェックが社内で実施されているかどうか、もう一度確認してみて下さい。
アルコール検知器の数値がいくつまでなら運転してもいいの?
微量でも検出されたら運転NGです!
数値がいくつまでなら運転してもいいのかというご質問を受けたことがありますが、数値が0でない場合、安全運転管理者は運行中止の判断を下すべきです。
道路交通法では「何人も酒気を帯びて運転してはならない」と定められており、酒気帯び運転になる基準数値以下であっても運転してよいことにはなりません。
(例え酒気帯び運転にならなくても安全運転義務違反に該当します。)
もちろん飲酒検知で数値が出たことを知りながら運転させれば、安全運転管理者の管理義務違反にもあたります。
飲酒していないのに微量の数値が出てしまった場合は、本人の申告を鵜呑みにせずにうがいをし、15分ほどあけてから再度アルコール検知器を用いたアルコールチェックをするようにしましょう。
飲酒検知で怖いのはアルコールチェッカーの誤作動。
誤作動によって数値が出てしまうと業務に悪影響が出ますし、飲酒しているにも関わらず反応しなかったとなるとさらに問題です。
そこでその精度に信頼がおける商品として、当社取り扱いのアルコールマネージャー®をご紹介します。
開発国アメリカでは警察や軍などの公的機関でも使用しており、日本においてはアルコール検知器協議会の認定機器にも登録されています。
さらに年に一度センサーを校正しメンテナンスを実施するので、高精度なまま長く使用できることが一押しのポイント。
会社として導入するにあたって安心して推薦できる、信頼と実績ある高精度検知器です。
対面が原則、会話は絶対!「目視等」の意味を正しく理解しよう
安全運転管理者によるアルコールチェックの大原則は「人対人」の確認。
この法改正の根底には『人が五感を使って運転手のアルコールの有無を確認して下さい、アルコールチェッカーは検知の補助として利用しましょう』というスタンスがあります。
一言でまとめて「目視等」としていますが、つまり
「なるべく対面で運転手の様子を確認しましょう、対面が無理でも最低限直接会話をして下さい」という意味なのです。
人と人による確認はどんな機械にも勝るということなのでしょうか。
とにかくこの大原則をまずは理解しておいてください。
「人対人」がポイントなので、対面による確認が原則とされています。
確認する点は
・顔色
・呼気の匂い
・応答の声の調子
など、お酒を飲むと影響がやすいところですね。
特に匂いは対面でないと確認できない要チェックポイント。匂いはなかなかごまかせないものですので、対面時はさりげなくクンクンするのもお忘れなく。
では対面で確認できない場合はどうすればいいのでしょうか。
その場合は対面に代わる手段として、電話やオンライン通話機能を利用してオンタイムで直接会話をした上でアルコールチェッカーでの検知結果を報告させることが必要です。
動画を撮影して記録を残しておくことや、クラウド上に記録が残る等でアルコール検知器の数値をごまかしや不正を防止するのは素晴らしい手段です!が、システムだけではNG。
なんとかして会話しなければいけません。
そうなると安全運転管理者の負担が心配になりますね。
そこで、安全運転管理者の皆様は是非「補助者」を積極的に活用して負担を軽減しましょう。
確認を受けるのは必ずしも安全運転管理者でなくても大丈夫。
あらかじめ補助者を指定しておけば、その人に確認を変わってもらえます。
補助者は安全運転管理者の負担を軽減するための役割なので指定に関する規定はとてもゆるめ。手続きの必要もなく簡単に指定できます。
補助者について詳しくは過去コラムをご確認下さい。
【安全運転管理者だけで頑張らないで!補助者を指定して負担を軽減しよう】
検知はいつするの?アルコールチェッカーに決まりはあるの?
飲酒検知は運転を含む業務の前後とされています。必ずしも運転の直前直後でなくても、朝礼や退勤前などのタイミングで確認することで足ります。
運転する都度毎回検知する必用はないので、なるべく多くの社員が出そろうタイミングで検知を行うのがよいですね。
アルコール検知器についても色や数値でアルコールが検出されたらお知らせする機能がついていればOK。市販のアルコールチェッカーならば基準を満たしていると考えて問題なさそうです。
種類が多くて迷ってしまうという方には、当社のアルコールマネージャー®がおすすめ!
とにかく優秀な検知器なので、この機会に是非導入をご検討下さい。
詳しくは過去コラムにまとめてありますので是非ご確認下さいね。
【元警察官】推薦!アルコールチェッカーはアルコールマネージャー®が一押しの理由
業務7 酒気帯び確認の記録・保存とアルコール検知器の常時有効保持
≪業務6「運転前後の酒気帯びの有無の確認」の内容を記録して1年間保存し、アルコール検知器を常時有効に保持する≫
記録の保存はなるべく簡単に!運行日誌と合わせて記録保存すると便利
酒気帯びの有無を確認したら、必用な項目を記録し1年間保管しなければなりません。
保管の方法はなんでもOK。紙保管でもクラウド保存でも、やりやすい手法で問題ありません。
重要なのは正しく検知をすることなので、この記録保管はなるべく簡単に済ませましょう。
アルコール検知に関して記録の必要がある項目は以下の8つ。
・確認者名
・運転者
・自動車ナンバー(自動車登録番号又は識別できる記号、番号等)
・確認の日時
・確認方法(対面でない場合は具体的方法等)
・酒気帯びの有無
・指示事項
・その他必要な事項
これらの情報を毎回担当者が手書きするのは大変ですよね。
しかし酒気帯びの有無の確認と記録保管を適切に行わなければ、最悪安全運転管理者の解任を命ぜられる事態になってしまいます。
なるべく簡単にかつ適切に記録保管するためにも、システムの力を有効に活用してみてはいかがでしょうか。
検査結果が自動でクラウドに送信される弊社のアルコールマネージャー®なら、わずらわしい記録保管の手間が省ける上、操作も簡単でおすすめです。
アルコール検知器は説明書通りに点検管理をしましょう
壊れたアルコール検知器を知らずに使って正しく検知されないと大変ですよね。
アルコール検知器がいつも故障なく正しく使えるよう点検管理することは、安全運転管理者の大切な業務です。
アルコール検知器には使用回数や期限が定められているので、それを超えて使用してはいけません。取り扱い説明書をよく読み適切に管理して下さい。
万が一故障した場合には速やかに代替えを用意し、修理するか新たに買い替える必要があります。
今回説明できなかったアルコールチェックに関するよくある疑問について、過去コラムで詳しく解説していますので御覧ください。
当社でも安全運転管理者の方からの問い合わせを受け付けておりますので、こちらもご利用下さいね。
【元警察官】が解説!レンタカーとマイカーのアルコールチェック義務:県ごとの違いと安全運転管理者の混乱を解説
業務8 運行日誌の備え付けと記録
≪運転の状況を把握するため、必要な事項を記録する運転日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させる≫
運行日誌の役割は、
①過労運転になっていないか・適切なルートを通っているかなど、計画通りの運行がされているか確認する
②車の状態を記録し、異常を早期に発見する
③その他必要な情報を共有する
などがあります。
「③その他必要な情報を共有する」とは、運転中に遭遇したヒヤリハットの場面や通行規制情報、車両の気になる点など様々です。
こういった情報は些細なように見えてスルーされがちですが、実際に運転しなければ知りえない貴重な情報のひとつ。
運転者が記録せずに終わることも多いので、運行日誌の提出を受ける安全運転管理者はなるべく口頭でも変わったことがなかったか質問し、周知すべきと感じた内容はどんどん情報共有するようにしましょう。
そして、先ほど業務7の項目でも説明した通り、運転者が負担に感じるような詳細な記録は必要ありません。
書く欄が多い方がより多くの情報を得られるかと思いきや、実は逆効果。
人間はあまのじゃくな生き物なので、記載欄が多いと省略したくなり、簡単で大きな記載欄だと備考欄まできっちり埋まっていたりするものなのです。
なるべく簡単な内容で必用な情報が得られる運行日誌を工夫して作成してみて下さい。
弊社アルコールマネージャーのアプリ上にも、運転日報の機能がありますので参考にしてください。
業務9 安全運転の指導
≪運転者に対し、自動車の運転に関する技能・知識、その他安全運転を確保するため必用な事項について指導を行う≫
ここまではどちらかというと管理監督の面が強かった安全運転管理者の業務内容ですが、最後に「指導」という業務があります。
ここまでの業務で集めた情報をもとに、社員に対して安全運転ができるよう指導をすること。
とても大切ですが、安全運転管理者の方が悩みやすい業務内容でもあります。
この指導方法は、本当に会社によって様々です。
筆者の過去の経験上、半年に一度大規模に全員参加型の講習会を開催する企業もあれば、違反・事故を起こした人を集めてより具体的に指導する企業もありました。
他にも運転技術の高い社員と同乗させて実際に道路上を運転させる企業、安全運転センターに出向き専門家の指導を受ける企業、管轄の警察署に依頼して講習会をしてもらう企業…。
どこも会社の実情に合わせて実施されており、それぞれのスタイルがあるんだなと感心するほど様々でした。
そこでこのコラムでは、一般的に言われる指導のポイントを2つ挙げてみます。
対象者に応じた指導
指導する相手に合わせた指導をしましょう。
相手は熟練者なのかペーパードライバーなのか、新入社員なのか先輩社員なのかによって指導内容は変わりますね。
また伝える内容は自動車に関することなのか、二輪車なのか自転車なのかによっても変わります。
いつも同じ内容でなく、その都度相手に合わせた内容の指導をしましょう。
相手の興味・関心を引く手法を用いる
難しいことは承知の上で書きますが、相手が興味を持つ内容に工夫しましょう。
同じ社員のドライブレコーダー映像を使ってみる、飲酒状態を体験できるゴーグルなどのアイテムを使ってみる、インパクトのあるDVDを鑑賞するなど手法は様々あります。
一般に安全教育の効果は3カ月間続くと言われています。
少なくとも指導日から3カ月間は相手に無事故無違反でいてもらえるよう、印象に残る指導方法を工夫してみて下さい。
安全運転管理者の責任は重い!業務内容をしっかり理解しよう
安全運転管理者が業務をおろそかにしてしまうといざ事故が起きた際に企業のダメージが甚大なものになります。
それは慰謝料等の具体的なものだけでなく、冒頭で述べたような報道によるダメージも図り知れません。
企業コンプライアンスの砦として、安全運転管理者の皆様には責任をもって業務にあたっていただきたいと思います。
交通事故が起きないことは当たり前ではありません。
今も交通事故はこの国のどこかで発生していることでしょう。
安全運転管理者の業務は面倒で細かいものが多く大変ですが、確実に交通事故の防止に役立っているのです。
大切な社員とその家族を守るためにも、毎日の努力を積み重ねてゆきたいですね。
ライター紹介:いのともみ
元警察官。半年前まで都内警察署で勤務。在職中は交通部門で働いた経験が10年近くあり、退職後はWebライターとして飲酒運転防止、安全運転教育などの執筆をおこなっている。